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古歌に 『なにごとも 我をあやまり したがいて 負けてさえいりゃ この身安心』 というのがありますが、なにごとも謙虚になって、自分を一歩控えて相手を立ててあげるのが世渡りのコツで、これで万事好都合に運ぶという趣旨です。 これは具体的にどうすれば良いのかというと、別れ話でも、仕事の失敗でも、先に謝って相手を持ち上げたほうが、うまく万事が運んで自分の思うように展開していくということです。 たとえば、不倫関係を続けていた関係に何とか終止符を打ちたいと思っていたときには、相手の非をけっして責めるのではなく、「こういう結末になってしまったのは、すべて自分に責任がある」という切り出しで、別れ話を持ち出すのです。 ほんとうは男のほうから別れたがっているのは間違いないのですが、最初に「ボクが悪かった」と非を認めたために、女性のほうから責める糸口が見つからず、しだいに気持ちが軟化していきます。 そうすると、「別れる原因は自分にもある」という錯覚を女性も持つようになり、責任の一端を感じるようになって、納得してしまうというものです。 これと同じで、新しいプロジェクトの説明を役員会議で部下にさせたところ、説明不足ということで、その計画案が採用されなかったような場合、ふつうの上司なら、部下の非を責めるところでしょう。 たとえば、「昨日のあの説明は何だ、あんな説明では説得できないじゃないか」などと、いきなり部下を責めようものなら、たとえ部下が全責任は自分にあると納得していたとしても、頭ごなしに叱られたら、あとあと感情的なしこりが残ることは間違いありません。 そんなときには、指導力のある賢い上司は、「昨日、キミに説明させてしまったのは、自分にも責任があるよ。 まだ十分練れていない段階では早すぎたようだ、悪かったよ」と言えばどうでしょう。 こうまで上司が自分に非があるように話したら、部下としては、自分の責任は重々承知しているので、思わず「すみません。私の説明不足で、申し訳ありませんでした」と言わざるを得ないでしょう。 賢い上司は、相手の非を自ら認めさせ、そして、お互いに感情のしこりを残さないように配慮できる人であり、まさに、古歌にあるように「先に謝れば、わが身も人も安泰」ということになるのです。 |
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